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1期目地方議員の海外訪問

  • 1 時間前
  • 読了時間: 9分

こんにちは! もう半年近く前になってしまうのですが、姉妹都市交流と会派による海外視察に同時期に行ったことを頑張ろう日本国民協議会さんとお話をしたところ、原稿を書いてほしいということでしたので、簡単ではありますが、地方議員が海外訪問をすることについて寄稿させていただきました。

報告書がもう間もなくインターネット上に公開されると思います(様々、確認があるようで遅くなっております・・・)ので、公開された際は、改めて皆様にご報告させていただきます。

それでは、下記が視察内容の一部と地方議員が海外に行くことについての所感になります。





今回、世田谷区の姉妹都市であるカナダ・マニトバ州ウィニペグ市への姉妹都市提携55周年記念親善訪問、および所属会派による台湾視察という、2か所の海外訪問を行いました。

「地方議員が海外に行く意味はあるのか」区民の皆様からお預かりした税金が使われる以上、これは極めて真っ当な疑問です。私自身、姉妹都市派遣は区長や議長といった最小限の人数で行うべきではないかと考えていた時期もありました。


実際、当区議会においても、議員団の姉妹都市派遣に反対の立場を示す会派があり、会派に割り当てられた派遣枠を辞退する会派も存在します。

地方議員は、地域をくまなく回り、区民の皆様が抱える足元の課題に対応することが基本だと考えます。そうした観点から見れば、「地方議員が海外に行く意味はあるのか」という疑問が生じるのは自然なことだと考えます。


今回、姉妹都市派遣と会派視察という性質の異なる2つの海外訪問を経験して感じたことは、どちらも「行くこと」そのものに価値があるわけではないということです。問われるのは、「なぜ行くのか」「何を持ち帰るのか」、そして、その経験を「どのように区政や区民の皆様に還元していくのか」という議員の姿勢です。

1期目の新人議員として初めて経験した海外訪問は、その意義とあり方を深く考える機会となりました。




ウィニペグと本区は、日系人とカナダ二世協会の呼びかけによる児童・生徒の絵画交換をきっかけに交流が始まり、小・中学校間の姉妹校提携を経て、現在は中学生の相互ホームステイによる交流事業が行われています。区長・区議団のウィニペグ訪問は10年ぶりで、5年前はコロナ禍で実現できませんでした。


今回は55周年記念調印式に加え、学校や交通基地局、世界で唯一の人権をテーマにしたカナダ人権博物館等を視察するとともに、ウィニペグ市長や議員、州政府との意見交換、マニトバ日本文化協会との交流も実施しました。

このマニトバ日本文化協会は、第二次世界大戦当時に日系カナダ人が経験した強制移住・財産没収といった深刻な人権侵害に対する補償や、文化の継承と尊厳の回復を目的として立ち上げられた団体です。

こうした視察や意見交換を通じての学びは多岐に渡りますが、一つ挙げるとすれば3つの学校訪問における多様な取り組みです。


一つ目のSeven Oaks Met Schoolでは、不登校などを経験した生徒が「生きがい」を見つけられるようプログラムが組まれており、ビッグ・ピクチャー・エデュケーションという手法で子どもたち一人ひとりの興味、強み、情熱に焦点を当てたアプローチがなされていました。

週に1回のインターンシッププログラムでは、どういった仕事をしていきたいのか考え、発見できる仕組みが構築され「地域全体が学校であり学び場」となっていました。

当区では令和8年4月に新たな学びの多様化学校(不登校特例校)として北沢学園中学校が開設されることから、その運営に大きな示唆を得ました。


二つ目のGonzaga Middle Schoolでは、多文化主義のカナダでかつて取られていた寄宿舎制度という同化政策の影響で、当時の教育を受けた先住民世代がカナダの教育に大きな不信感を抱いている現状があります。そのため先住民の子どもたちの退学率や経済的貧困が課題となっており、この学校での支援は素晴らしい取り組みでした。通常、学校を卒業すれば支援が途切れることが多いですが、この学校では卒業後も一定の年齢まで同学校ならびにスクールカウンセラーに相談できる体制が整っており、「いつでも頼れる場」として不登校や生きづらさを抱える子どもたちへの教育と福祉による支援体制が構築されていました。


こうした様々な学びがある一方、訪問したからこそ見えてきた姉妹都市交流における課題もあり、そちらについては最後にまとめさせていただきます。




当区議会の単独会派が海外視察を行うことは、珍しいことです。訪問前には事務局から「本当に行くのか」「ちゃんと区民への説明ができるか」といった確認を受けたほどでした。

通訳などを必要とするため国内視察よりも高額になることを踏まえ、区民の皆様にしっかりと報告ができるよう入念に事前研究や計画を立てて訪問を実施しました。

台湾での訪問では、政党幹部への訪問なども行いましたが、多くの時間は視察に時間を割きました。台湾でもウィニペグ同様、様々な学びと経験を得ましたが、やはり台湾のデジタル活用には、目を見張るものがありました。


その一つがTPMO(Taipei Smart City Project Management Office)の取組みでした。

台北市のスマートシティ化を促進する行政内の組織で、民間出身の大学教授や専門家によって組織される、日本ではなかなか見当たらない組織です。

実施していることは単純で、行政が抱える課題を民間提案により解決していくというものです。しかし、その民間提案の導入スピード、規模感は当区にはないものであり、上手く機能するようフローが設計をされていました。

その仕組みと成功の要因を簡単にまとめると、まず行政と企業では、仕事の進め方が根本的に異なります。行政は公平性を重視し慎重な手続きを踏む一方、民間企業は利潤追求のため速い意思決定と柔軟な対応が求められます。

双方の異なる価値観や文化を解決するため、TPMOは行政組織の一部として、民間と連携すべき課題を一元的に把握し、官民双方の文化に通じた「通訳者」として機能しています。これが官民連携による行政課題解決やスマートシティ化の成功要因だと感じました。

当区にも官民連携担当部署はありますが、TPMOのようにデジタル技術を活用した課題の一元管理ができていません。また、区の組織である以上、双方の文化を「通訳」できる体制にはなっていないと考えられます。

そのため「Co-Lab」という官民連携窓口がありながら、広報など既存事業の延長的な連携に留まっています。一方TPMOでは、実証成功後に翌年度予算化される流れが構築されており、これが企業のインセンティブとなり、行政との協働が見通しを持った投資として成立しています。

視察の先々で多くの学びを得て帰国し、さっそく議会質問などを通じて区政への反映に取り組んでいるところです。




簡単ではありますが、姉妹都市派遣と会派視察における学びを紹介してきました。地方議員が海外へ行く意味は、単一的な尺度で測ることは難しく、訪問後に何を考え、何を語り、どのように区政へつなげ区民還元していくのかという点が評価のポイントになると考えます。


姉妹都市派遣は、成果がすぐに表れるものではないかもしれません。区が行える外交として時間をかけて築かれてきた関係を引き継ぎ、次の世代へつないでいくことが、まず大きな責任としてあります。

偶然、私が訪問したことをSNSに投稿したところ、後輩が中学生の時にウィニペグへ姉妹都市訪問しており「私の人生最初の、大きな分岐点になるほど影響を与えた」とコメントをくれました。日本と異なり授業ごとに教室を移動すること、中学生なのにフランス語と英語の二か国語を話す友達がいて植民地時代の影響を肌で感じた、とも語ってくれ、その後の海外留学への後押しになったとのことでした。

こうした話からも、姉妹都市交流が子どもたちの価値観形成に寄与してきたことは、本区だけでなく我が国にとっても大きな財産であり、より多くの子どもにこうした経験をしてもらうため、区議会議員としても働かなければならないと感じます。

また、交流が「続いていること」自体が価値を持つ一方で、その中身が時代に即して更新されているかどうかが常に問われ続けます。ウィニペグに関しては、生徒の派遣交流以外の交流による区民還元についても模索していくべきだと感じています。


また、政策視察としての海外訪問にも、明確な目的意識と説明責任が求められます。多くの自治体で行政視察や会派視察が行われますが、行先のほとんどは国内です。

しかし、当区は90万人以上の区民が住み、複数の県以上の人口を抱える都市でもあります。確かに国内の先進事例から学ぶことは多く重要ですが、日本国内だけでは先進事例が限られてくるのも事実です。

その点、海外の都市に目を向けることは、思考の幅を広げるための手段ともなります。日本とは異なる制度や文化、行政と市民の関係性を前提にした取組みを知ることで、自分たちが当然だと思っていた前提を問い直すことができます。

単に成功事例を持ち帰るだけでなく、「なぜ世田谷では同じことが難しいのか」「制度上の障壁になっているのか」といったことを考えることも重要であり、その結果としてより良い区民生活の充実につなげることができると考えます。


そして、何よりも税金を支出する以上、派遣や視察のあり方は常に検証されなければなりません。慣例として行うのではなく、本当に今以上に経費を節約することができないのか、派遣議員の選び方は正しいのかといった姉妹都市派遣の実施方法の再検討、必要なものは残し、見直すべき点は見直す。その姿勢を議会として持ち続けることが不可欠だと考えます。

私は、海外派遣や海外視察を全て正当化したいわけでも、不要なものと断罪するつもりもありません。区の事業や他の税金の支出と同様に、必要性があれば行き、そうでなければ見直す。その判断を、区民の皆様にご納得いただける言葉で説明や報告ができるのか。その作業を積み重ねていくことこそが、地方議員による海外訪問における役割と責任だと考えています。


今回のウィニペグへの姉妹都市派遣、そして台湾での政策視察を通じて得た学びを、経験のままで終わらせず、これらを区政にどう生かし、どのように区民の皆様に還元していくのか、その意識と問いを持ち続け、行動としてお示ししていきたいと思います。


※ウィニペグ訪問の報告者と台湾視察の報告書はネット上で公開予定ですので、詳細はそちらをご覧ください。

日本、カナダの国旗にマニトバ州州旗(ウィニペグが所在する州)
日本、カナダの国旗にマニトバ州州旗(ウィニペグが所在する州)


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